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1142話

「そうそう、でもね、彼の財布はここにあるし、彼らも今頃はきっと無一文だろうよ」泥棒はそう言いながら財布を鬼眼に差し出した。

鬼厉は両手を背中で組み、しばらく考えてから軽く頷き、薄暗い路地の奥へと歩き出した。

「覚えておけ、もし再び奴の姿を見かけても、無謀な真似はするな。まず第一に俺に知らせろ。お前の取り分はちゃんと用意しておく」そう言い終わると財布を投げ渡した。「褒美だ」

すぐに鬼眼も路地の奥へと姿を消した。

泥棒は二人の姿が見えなくなるまで待ち、やっと額の大粒の汗を拭った。胸も背中も服が汗でびっしょりと濡れていることに気づいた。

あいつらは一体何者だ?なんであんなに不気味なんだ?泥...