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35話

警備員の居眠り一つで、夏子坤は木の幹を踏み台にして塀を乗り越え、学校の敷地内に侵入した。

足が地面に着くや否や、顔を上げると、見慣れた顔が目に入った。

顧蕭が長い脚で彼の前に立っていた。泳部の練習で着用する青いジャージ姿で、濃く黒い剣のような眉は結び目のように顰められ、冷たい眼差しを向けていた。

夏子坤は手についた埃を払い、顧蕭を一瞥すると、彼の傍らを通り過ぎた。

彼は顧蕭など眼中になど置いていなかった。

「待て」

背後から冷たい声が響き、夏子坤は足を止めたが、苛立ちを隠さない表情だった。

顧蕭は振り返り、夏子坤の背中を見つめた。

「顔離をどこに連れて行った?」顧蕭が尋ねた。

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