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28話

ポケットの中で携帯が二度振動した。顔離は携帯を取り出し、手を膝に当てながら、うつむいて画面を見た。

易小森からのメッセージだった。

「放課後、いつもの場所で迎えに行く」

画面に浮かぶ黒い文字が瞳に刻まれる。たったこれだけの言葉で、彼女は思わず口元を緩めていた。

顔に笑みが浮かび、その笑顔は心の中の蜜のように少しずつ溢れ出し、目までも細めていた。

「うん」と彼女は返信した。

短くて甘ったるい一文字。

二人はそれ以上の言葉を交わさなかった。携帯を閉じると、彼女は顔を本に埋め、頭を少し傾げたまま、顔から笑みは消えず、何か秘密を隠しているかのような、そっと大切なものを守るような表情をして...