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646話

ブラックは命からがら脱出した英雄として戻ってきたわけではなかった。行方不明になった十年間、彼は強靭な精神力と生存への執念で現地の傭兵組織に加わりながら、自らの素性を隠し、小隊が襲撃された真相を突き止めようとしていたのだ。

姿を変え、様々な傭兵団に紛れ込んでいた時、彼はその襲撃戦について人々が話すのを耳にした。誰かが傭兵を買収し、ある人物の首を求めていたという。皮肉なことに、他の隊員たちは死傷したにもかかわらず、首を差し出すべき当の人物だけが逃げおおせたのだと。

当時ブラックは、自分以外にも生き残った者がいるとは知らず、自分だけが奇跡的に難を逃れたと思い込んでいた。だから彼は、誰かが金を払っ...