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986話

「どうしてそんなこと聞くの?私を捨てたいの?一人で遠くへ行きたいの?昨日、誰かが言ってたわ。私が分をわきまえず、お兄さんを独り占めしようとしてるって。お兄さん、私って欲張りなのかな?でも本当にずっとお兄さんのそばにいたいの。一生そばにいたいの。こんな気持ち、今まで一度もなかった。こんなに強く思ったことなんて一度もなかったの、お兄さん……」

彼女は柔らかく「お兄さん」と呼びながら、自分の無力さを訴え、同時に願いを語っていた。私はため息をついた。やはり子供は子供だ。同じベッドで最も親密なことをした今でも、彼女はこんなにも不安を抱えている。この子は生まれつき安心感を持てない人間なのかもしれない。

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