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926話

私はファイルを開いた。中身はたいしたことはなく、単に協力関係や利益配分、リスクについて簡単に書かれているだけだった。

しかし、何について協力するのか、一言も触れられていなかった。

「これは密輸だ」

ちらりと見ただけで、すぐに理解した。彼は国内へ物を密輸したいのだが、自力では国境を越えられない。だから、私を通して抜け道を探しているのだ。

「弟よ、そんな不愉快な言い方はやめてくれ。この世界は弱肉強食、法なんてものはない。金さえあれば手に入らないものなどないんだよ」

王有権はソファーに横たわり、だらしなく言った。その痩せこけた体つきは、明らかに女遊びに溺れた男のものだった。

「いいだろう、引き受けよ...