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817話

彼女は溺れる子供のように、私の胸元の服をしっかりと掴んでいた。まるで最後の救いの藁にすがるかのように、絶対に手放そうとしない。

「あなた……」

私は驚きのあまり両手が硬直し、唇も言うことを聞かず、まったくコントロールが効かなかった。頭では分かっていたのに。この状況で彼女を拒絶すべき、拒絶しなければならないと。

彼女はただショックを受けて、こんな現実を受け入れられないだけなんだ。完全に理性を失っている。もし今、私たち二人の間で取り返しのつかない過ちを犯してしまったら、彼女が冷静になったとき、必ず後悔するだろう。

だが、私の身体は彼女の存在を強く求めていた。彼女がそんな言葉を口にするのを聞いた瞬間...