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791話

彼女は突然、前回のことを話し始めた。話し終わると、顔を両手で覆いソファーで嗚咽を漏らし始めた。

「前回?」

ジョンさっきも言っていた。前回、余計な真似をした者を海に投げ込み魚の餌にしたと。だが婉児がこれほど悲しんでいるということは、事態はそう単純ではないようだ。

「前回の護衛の方は、お嬢様が可哀想で助けようとしたんです。でも結果的にジョンにお嬢様の目の前で殺されて、バラバラにされて…お嬢様に全部見せつけられたんです」

「あれ以来、もう一つの人格がよく現れるようになって。お嬢様はこんなことに耐えられるはずがないんです。毎晩悪夢にうなされて、一時は護衛を雇うことさえ拒んでいました。旦那様が...