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786話

彼はポケットに両手を入れていた。中に何か用意していて、いつでも取り出せる状態なのが感じ取れた。

「彼女は俺の上司だ。心配するのは当然だろ。彼女に何かあったら、俺は失業の準備をしなきゃならないんだぞ?」

俺はふてぶてしく笑った。この男、警戒心がかなり強い。初対面なのに、すでに違和感に気づいている。

まるで狼のように鋭敏だ。

「ふん」

彼は鼻を鳴らし、もう俺に構わず、そのまま上がっていった。歩調はゆっくりとして、俺が言ったことなど全く気にしていない様子。彼が上がっていくと、俺は急に気づいた。

あの強気な女が用意したものが、まだ片付けられていないようだ!!!

「くそっ!」

その瞬間、頭...