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749話

窓や扉を一通り見回してみたが、どれも無事だった。侵入された形跡は一切なく、居間にも誰もいなかった。ただ、階段の方からカサカサと物音が聞こえてくる。

眉をひそめながら、フライ返しを手に持ち、身構えたまま近づいていった。

居間の電気はつけていなかった。婉児さまが夜中に下りてくることなどないし、私も必要としていなかったからだ。今見ると、その暗がりには何とも言えない冷たさが漂っていた。

「痛たたた!」

突然の悲鳴とともに、髪を垂らした人の頭が目の前に現れ、私はフライ返しを落としそうになり、小さな悲鳴を上げかけた。

だが、次の瞬間にはすぐに気づいた。これは婉児さまの声ではないか?

後ずさりしかけた体...