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379話

「随分と楽しそうじゃないか」

冷たいままの小さな手が、私の手を遮るように伸びてきて、スイッチを探そうとする動きを阻んだ。ふわりと漂う香りが鼻をくすぐる。この香り、どこか懐かしいような…でも、今日どこでこの香りを嗅いだのか、すぐには思い出せない。

「当然ですよ。あなたは?」

相手は女性だったが、わざと声を低くしていて、誰なのか全く聞き分けられなかった。

目を見開いて、目の前の人物を少しでも見極めようとする。これは恥ずかしい、完全に面目丸つぶれだ。

「当ててみて」

低い声が耳元で響き、耳がくすぐったくなる。体が勝手に反応してしまった。

真っ暗な密室の中で、見知らぬ謎めいた女性が目の前に立ち、こんな...