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1212話

「ちょっと、一口噛んでみたいな」

きっと、柔らかくて香り高いんだろう。

「いや、そのまま横になっていて。じっくり眺めさせてよ」

どれくらい経っただろう、この女をちゃんと見つめるのは。昔は、少し酒を飲むだけで酔っ払って、自分が誰だか、どこにいるのかもわからなくなった。彼女が眠ってしまえば、俺はその隙に付け込んだものだ。

あの頃は、こそこそと、ひやひやしながら。それがまた格別に刺激的だった。

思い出すだけで、くそっ、ムラムラしてくる。

「何見てるのよ。鼻に水が入ったわ、起き上がらせてよ!」

「いや、いや、そのままで。どうせ起きても、またすぐ横になるんだから」

「あんた!」

こんな下心丸出しの言葉に...