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652話

隣の部屋から微かに春の声が聞こえてきた時、古蜀王はバルコニー脇の絨毯に座り、虚ろな目で星空を見つめていた。

部屋の壁は防音仕様だったが、彼女の耳を遮ることはできなかった。

あの声が最初に響いた瞬間、古蜀王は思わず床から飛び上がり、隣室に駆け込んで、あの犬畜生のカップルを生きたまま打ち殺してやろうかと思った。

だが、すぐに思いとどまった。

彼女にはよくわかっていた。あの不潔な男はすでに自分の知らないところで、どれほど多くの女と関係を持ったことか。なぜかこの男はずっと運が良くて、病気やエイズにもかからずにいた。

そして彼女は実際、楊動を殺すことなどできなかった。

それは彼が強すぎるから...