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1084話

あの九蛟龍にも比肩する身のこなしを持つ大男が誰なのか、寧苗苗には知る興味などなかった。

知りたいとも思わなかった。

なぜなら彼女には明らかだった。この世界で古蜀王を除けば、武芸の腕前では自分こそが天下一なのだと。

取るに足らない無名の小者など、林映冰に比べれば遥かに重要ではない。だから彼女は最速でそちらに戻ろうとしていた。

梅雨姬が蛇や死体を操っていた赤い陶器の金線埙はすでに砕けている。埙の音で操ることができなくなれば、毒蛇たちは当然退くはずだ。

だが寧苗苗の心には何か不吉な予感がつきまとっていた。自分が梅雨を倒しに行ったのは、まるで相手の想定内だったのではないかと。そうでなければ、...