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662話

私たち二人が腰を下ろし、ワイングラスを持って彼女と乾杯しようとした瞬間、彼女はグラスを引いて避けた。乾杯を拒むなんて、もしかして交杯酒を飲みたいのか?

そう思った途端、僕はニヤリと笑い、立ち上がって彼女に腕を伸ばし、交杯酒の準備をした。

彼女は驚いた表情で僕を見つめた。「何してるの?」

「乾杯しないってことは、交杯酒を飲みたいんじゃないの?」

その言葉を聞いた彼女は一瞬キョトンとした後、プッと吹き出した。「自惚れね。誰があなたと交杯酒なんて飲むっていうの」

「じゃあ、どういう意味だったの?」

僕は座り直し、少し困惑した様子で彼女を見た。

「こんなロマンチックな場面を作ったからって...