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613話

約四十分ほど経って、車は北部の下町区にある「愛尚」バーに到着した。

ドン!

車から降りると、足早にバーの中へと向かい、すぐに二階に着いた。途中、従業員たちは私を見かけると、笑顔で挨拶してくる。今では経営者の風格にも慣れ、彼らに軽く頷き返すだけで、以前のような高揚感はもう感じなくなっていた。

総支配人室の前に立ち、ドアを押し開けると、小禾がテーブルの周りで忙しそうにしていた。

テーブルには布が敷かれ、花束やキャンドル、ワイングラス、赤ワインなどが並べられていた。その飾り付けに目を奪われ、茶目っ気たっぷりに尋ねた。「小禾、まだ夜でもないのに、キャンドルディナーでもするつもりか?」

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