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606話

ドアベルがかなり鳴り続けたのに、誰も出てこない。一気に気分が落ち込んだ。

まだ帰ってきていないのか?

胸の中の炎が一気に消えていく。まるで真夏の暑さで額から汗を滴らせ、やっとのことで店にたどり着いてアイスか冷たい飲み物でも買おうとしたら「売り切れです」と言われた時のような気分だ。

良い料理は待っても美味しい。これまで待ったんだから、もう少し待つのも同じだ。そう自分を慰めるしかない。

情けないわけじゃない。ただ、道中ずっと彼女をどうやって攻略しようかと妄想していたのに、いざ着いたら彼女がまだ帰ってきていないなんて、少しがっかりする。男ならわかるだろう、あの焦れったい瞬間には、すぐ...