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197話

サソリは歯を食いしばり、その男の手目掛けて斧を振り下ろした。

私は反射的に田一禾を強く抱きしめ、斧が振り下ろされた瞬間、思わず目を閉じた。

正直に言うと、サソリに手を下させようとした時、心の中で躊躇いがあった。自分は暴力的すぎるのではないか、あの悪事を働く「社会人」たちと何が違うのかと、思わず自問した。

だが考え直せば、もし今日ここに立っていたのが他の誰かだったら、すでにこいつらに肉片にされていたかもしれない。

奴らは俺の命を狙った。俺は奴の手一本だけ。それでも奴らには甘すぎる話だ。

「ああっ……!」

男の悲痛な叫び声が響き渡った。

振り返ると、血液が仲間の顔に飛び...