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54話

「申し訳ありません、この頃は姫様から厳しく見張られていて……安儿はこの数日、お元気だった?」

「元気なんかじゃないわ!おばあちゃまが恋しいし、お父様も恋しい!ここの食事は平南侯府ほど豪華じゃないし、住まいも侯府ほど快適じゃないの。両隣がうるさくて、隣は饅頭屋さんなの。毎日まだ暗いうちから、あの人たちが餡を刻む音で起こされちゃうのよ」

「安儿、辛い思いをさせて……」

沈蘭児は声の聞こえてくる中庭に恐る恐る近づき、ここがある家の裏口だと気づいた。

中の会話から察するに、これが沈の屋敷?

表門と裏門が別々の通りに面していたため、沈蘭児は最初、今日の目的地に着いていたことに気づかなかったのだ...