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355話

心に何かあったのか、冷澜之は遊ぶ気が失せてしまった。「阿真、私は先に戻るわ」

「え?」慕容真は首を傾げた。「姫様、まだお祭りが始まってないのに?」

「うん、ちょっと用事があるの」

それを聞いて、慕容真はそれ以上詮索せず、軽く頷いた。「わかりました。では私もお戻りします」

半刻ほど経って、馬車はゆっくりと城内に入った。

突然、車が止まり、御者の声が聞こえた。「姫様、前方で喧嘩が起きております」

冷澜之は眉を上げ、幕を持ち上げて前を見ようとしたが、慕容真に遮られた。「姫様、ご覧にならないで。お目汚しになります」

同時に、外からは罵り合う声、女性の泣き声、男の悲鳴が混ざり合って聞こえて...