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29話

二日目の早朝、賀蓁蓁はすすんで起床した。

まず書斎へ赴き、昨日謝夫人に教わった数句を何度も暗誦し、一字一字確実に覚えたことを確認してから、紙に書き写してみた。

一通り書き終えると、紙に並んだ不格好な文字を見て、謝夫人の言葉を思い出した。「姫様の字は素晴らしいんですよ。かつて盛京で名を馳せた才女で、駙馬様とは才子佳人、天の配剤というべき組み合わせでした。姫様の字は、まさに一字千金の価値があり、駙馬様の字よりもずっと得難いものです」

謝夫人は書斎の壁に掛けられた一幅の絵を指さした。絵の右上には詩が添えられ、その筆跡は秀麗でありながらも力強さを兼ね備えていた。

当時の書道界では草書が好まれ、奔放不羈...