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165話

「姫様は一心に民のことを思い、民衆もまた自然と姫様の御心を感じ取っているのでしょう」澄んだ心地よい声が傍らで響いた。

冷嵐之は我に返り、複雑な思いを抱えて言った。「私は...あなた方が思うほど立派ではないわ」

温かさ、切なさ、安堵、そして後ろめたさ...

様々な感情が入り混じり、彼女の瞳は少し潤んでいた。

封地を任されて以来、彼女はほとんど領地の事に関わってこなかった。「民の苦しみを知らず」という言葉は、彼女にぴったりと当てはまるものだった。

先日の金を民に返したことさえ、自分の職務怠慢への償いに過ぎなかった。

彼女は自分が責任ある封地の主とは言えないと自覚しており、民衆の敬愛に応えら...