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658話

「ビジャック侯爵の城は、マルゴー・シャトーほど豪奢な造りではない。夜になると、むしろ暗闇が支配的な印象すら与える。湿った城壁に沿って歩いていると、何とも陰鬱な気配が漂ってくる。マルゴーの城と比べれば、ここはまるで堕天使が住まうような場所だ。あるいは西洋の吸血鬼の一族が棲む、荒れ果てて草木が生い茂る、人々に忘れ去られた片隅のようにも思える。

今この瞬間にカラスでも一羽、突然啼き声を上げたりしたら、さらに不気味な雰囲気が漂うだろう。

黒装束の男たちが私たちを先導し、何度か曲がりくねった道を通った末に立ち止まり、私たちの手にある招待状を確認してから、ようやく頷いて身体検査を始めた。

銃器の持ち込...