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589話

董姝の運転は確かに速かった。北京にいた時、あのストリートレーサーたちから身に付けた悪い癖だろう。アストンマーティンで飛ばすと、その速さは本当に恐ろしいものだった。

私はひやひやしていたが、彼女は大笑いしていた。黒くて長い真っ直ぐな髪の下には、超がつくほど腹黒い心が隠されているようだった。

「ゆっくり、ゆっくり、吐きそう……」

高速道路でこんな遊びをして、一台一台追い抜いていく。

董姝は楽しくて仕方ないといった様子だった。

本来なら一時間以上、二時間近くかかる道のりを、わずか四十分で既にロンドン市内に到着していた。

「なんてこった……スピード違反怖くないの?」

やっと速度が落ちると、私は白...