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282話

「ふふ、お前は吸血鬼だな、話にならないよ」

馬波は俺が値段を釣り上げようとしているのを見抜き、ポケットから小さな手帳を取り出して投げてよこした。「こっちはまだ少し忙しいから、先に戻るよ。これを持っておけ。什麼(なに)か特別な権限があるわけじゃないが、いざという時には面倒が減るはずだ。それと、あのファエトンも君にやるよ」

そう言って彼はドアを開けて出て行った。また親父と母さんと楽しそうに話し込んでいたかと思うと、母さんが一歩ごとに振り返りながら見送っていた。

俺はその手帳を見つめた。

とてもシンプルで、ほとんど文字がない。

証明書の表には大きな警察のバッジがあり、開くと中にはわずかな文字だけ...