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178話

「これは……」

狐が私をちらりと見て、言いかけて止めた。

この時間、松柏坊にはまだ大勢の人がいた。

これほど大きな事件が起きたのだから、高世松が自ら来るのも当然だ。部長も忙しくて来られなかったが、電話で私の無事を確かめてくれた。

「ああ、今日はここに泊まって、後でゆっくり話そう」

私は狐にそう言うと、彼は頷いて小貴と一緒に脇へ行った。

私と董姝が無事に戻ってきたとはいえ、高世松の顔色はまだ良くなかった。それも当然だ。董蘭は彼が直々に引き入れた投資団だったのに、ハルビンでこのような面目丸潰れの事態が起きたのだから。

「今日はここに泊まる。後で話をしよう」

高世松の儒雅な顔には、もはや笑みはなかっ...