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169話

その吐息から香る甘い香り、その艶やかで瑞々しい顔立ち。

私は今、この新車を走らせ始めたところだった。横に座る甄桃(チェンタオ)の瓜実顔を見ていると、彼女の頬は私と出会った時から赤みを帯びたままだ。水を湛えたような潤んだ杏眼は、今にも滴り落ちそうなほど。

「安心して、さっきのヘタレったら、ちょっと触っただけですぐダメになっちゃったわ……」

甘い声音は、かすかに息が荒いようにも聞こえる。

甄桃のような美女は、わざわざ誘惑する必要もなく、見ているだけで血が沸き立つほどだ。それが意図的に誘ってくるのだから、幾多の女性を口説いてきた秦少(チンシャオ)のような遊び人でさえ、甄桃のこの挑発に耐えられないのも...