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1029話

「香、香い?」

マトリンの声は蚊の鳴くような小ささだった。

私は目を閉じたまま、彼女の両足の震えを感じ取ることができた。彼女の顔に浮かぶ恥じらいと頬の薔薇色まで見えるようだった。そして、あの蘭のような麝香のような香りの源泉がどれほど素晴らしく、どれほど美しく、どれほど愛らしく、どれほど垂涎させるものなのかさえ感じ取れた……

やはり。

ホルモンの香りに、この香水の基調が混ざり合うと、この世で最も美しい存在となる。

私はすでに酔っていた。

本当に酔いしれていた。

香水の世界がこれほど神秘的だとは、初めて気づいた。

嗅覚という感覚が、時に粗暴で単純な触覚よりも、無限の幻想空間を与えてくれることを初め...