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1027話

私はどういうわけか、足が勝手に部屋に入っていた。

まあいい。

もうすぐ出航するというのに。こんな時に余計なことを考えるべきではないんだ。しかもこれから最後の決戦を迎える。左魔はほぼすべての人間の運命を掌握している。無事に帰ってこられるかどうか、本当に分からない。こんな時に女性に手を出すなんて、決して適切なことではない。

だが、マトリンが王女様だという事実が、彼女のかすかな好意と誘惑に抗うことを難しくしていた。

私は思わず唾を飲み込んだ。

初めて天泉ホテルの presidential suite に足を踏み入れる。

マトリンは清潔好きな人で、ベッドサイドテーブルには香水セットが置かれていた。とて...