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1024話

「やれやれ、参った」

私は完全に頭が真っ白になった。

マトリンの身体からは彼女自作の香水の芳香が漂い、柔らかな唇が軽く私の唇に触れた。一瞬の出来事だったが、彼女の全身から溢れる魅力と、まるで陽の光を含んだような風情を感じ取ることができた。マトリンは背が高く、カリンセほど極端ではないものの、彼女の身にまとうのは真の貴族としての優雅さと気品だった。

彼女が私にキスをする時、わずかに爪先立ち、顔には微笑みを浮かべていた。

厳密に言えば、彼女の容姿は国を傾けるほどの絶世の美女というわけではない。しかし、非の打ち所がなく、何よりも卓越した気質と圧倒的な存在感を持っていた。パーティーの場では、彼女は軽々と...