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63話

小桃源を出た雲想は、気分が最悪で、ただ無目的に歩き回っていた。

気がつくと、渝北路に辿り着いていた。この辺りは住宅街ばかりだ。

以前、彼女は夏君辰に内緒でここに来て物件を見たことがあった。残念ながら彼女の能力では頭金すら払えなかった。

だから彼女はあんなに一生懸命残業して働いていたのだ。給料が少しでも高くなれば、夏君辰の負担を少しでも減らせると思って。

でも今はもうそこまで頑張る必要はない。

「雲さん、こちらにお住まいですか?」白いアウディを運転していた張郭東が彼女の横に停車し、興味深そうに尋ねた。

「張先生」

雲想は一瞬驚いた。まさかここで心理カウンセラーに会うとは思わなかった。

「何...