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29話

雲想は自分がある場所に閉じ込められ、出られないような気がしていた。

目の前は漆黒の廊下、頭上の照明はひっきりなしに点滅し、周囲は恐ろしいほど静かで、自分の足音以外何も聞こえなかった。

心を満たす焦燥感に、他のことを気にかける余裕はなかった。

「ねえ~」

澄んだ女性の声に足を止める。彼女は少し離れたところ、薄暗い灯りの中で、十六、七歳の少女が電話をしているのを目にした。

距離があるにもかかわらず、少女の心の内が不思議と手に取るようにわかった。不安と恐怖に満ちていながらも、今は取り乱すわけにはいかず、「大丈夫、きっと全部うまくいく」と自分に言い聞かせている。

しかし現実は常に残酷だ。電話の向こうの...