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177話

墨星澤は隣の人と話しながらも、時折視線を雲想の方に向けていた。

「まったく、大げさだな」鍾政鳴が面白そうに言った。「付き合ってるんだし、一秒も見えないだけでそんなに探し回らなくても」

墨星澤はワイングラスを手に軽く揺らし、グラスに映るシャンパンの光を見つめながら思いを巡らせた。何年も探し続けた人をようやく見つけたのに、関係が深まる前にその人が突然いなくなり、そして車にはねられそうになり、さらには誘拐されて……

どれ一つとっても、彼の心を凍りつかせるに十分な出来事だった。

彼と雲想の間には、まさに波乱万丈の展開が続いていた。

できることなら、彼は自分と雲想の間に引き綱をつけて、彼を中心に半径10...