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109話

「赤鉄柱は狂狼の様子を見て、まだ少し背筋が凍るような恐怖を感じていた。自分のスパイとしての正体がバレるのではないかという不安が拭えなかった。

「ああ、今回の件はうまくいった。そろそろB市へ進出する時だな。これまで小さな都市に潜んでいたが、もう十分だ。我々の勢力を拡大する時が来たんだ」

狂狼の得意げな様子を見た赤鉄柱は、一瞬不機嫌な表情を浮かべた。

狂狼も赤鉄柱の視線に気づいたが、それは報酬がもらえなかったことで不満を抱いているのだろうと勘違いした。

「鉄柱よ、お前が我が黒狼帮に加わり、こんな大手柄を立てたんだ。組はお前を粗末にはしない。今の小頭目から老狼と同じ堂主に昇進させよう。どうだ...