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12話

江民越が提示した条件は、彼の立場から見れば確かに魅力的で、多くの人の心を動かすには十分なものだった。

「その話はまた今度にしましょう。僕はもう行きます。明日も仕事がありますから」

丁逸は江民越の誘いを断った。今の彼には江民越と関わり合いになる気持ちなど全くなかったからだ。

そう言うと、丁逸は江民越が反応する間もなく市場の外へと歩き出した。

丁逸の消えていく背中を見つめながら、江民越の顔には苦笑いが浮かんだ。金に動かされず、しかも自分の立場にも興味を示さない人間に出会ったのは初めてだった。

だが、そんな態度を見せられるほどに、彼は丁逸への興味をさらに掻き立てられ、相手がどんな人物なのか...