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368話

「県の中では富裕層とは言えませんが、それでも裕福な方でしょう。先日、この県の山麓に別荘を購入したところです」

「新しい別荘は山も水も空気も良くて、そんな環境の中で老後を過ごそうと思っています。ただ、少し辺鄙なところにあって、あの日の夜に事故に遭った場所の近くなんです。その時は夕食を済ませて、ちょっと散歩に出ただけだったんですが、結局遠くまで行ってしまって、事故に遭ってしまったんです」

「暗すぎて何も見えませんでしたが、キャデラックだったと思います」楊羽は知っていた。ひき逃げ犯を見つけるのは、もう望みがないだろうと。

「ああ、気にしなくていい。この県でそんな車を乗り回している人間はそう多く...