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269話

「今回ここに来たのは、最後の思い出作り。これからは彼のことを完全に忘れるつもりだから」秋月はそう言った。どうやら何か事情がありそうだ。

楊羽は、おそらく元彼氏の話だろうと推測し、「うん」と相槌を打ちながら、彼女に続きを促した。

「三年前、元彼氏がちょうどこの場所で遭難したの」秋月は突然感傷的になった。三年前、彼女は元彼氏とこの岩の上に座り、下の景色を眺めていたのだ。だが今、彼女の隣に寄り添っていた彼はもういない。

物は同じでも、人は変わってしまった。

「遭難?」楊羽はこの辺りを見回した。とても安全そうに見えるのに、どうして遭難するのだろう?野獣にでも襲われたのか?

「うん、あの夜もこ...