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1632話

この荒野は尋常ならぬ恐ろしさだった。東の空は青白い光を放ち、濃霧が立ち込め、辺りは漆黒の闇に包まれていた。冷たい風がそよぎ、どこからともなく女の泣き声が絶え間なく響いてきて、聞いているだけで背筋が凍りつくようだった。

恐怖のあまり、喇叭を吹いていた者さえ音を立てる勇気を失っていた。

幸い、鬼坡岭を回り込んだ時は何事もなく、もう下山の道が見えてきたところだった。

その時だった。

一本の大木から、外套を羽織った巨人が飛び降りてきた。その外套で先頭を歩いていた男を丸ごと包み込むと、口から正体不明の液体を吹きかけ、むさぼり食い始めた。

あっという間に、見るも無残な姿の死体を吐き出した。

生きていた人間...