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84話

季処長を見上げると、彼女は腕を組んだまま、冷ややかな眼差しで私を見つめ、微動だにしなかった。

今の私の頭の中は、ただ木のように鈍く、何の意識もなく、ただ死んだような感覚があるだけだった。

今でも信じられない。これが全て鐘紫荷に仕向けられたことだなんて。

私は彼女を深く信じ愛していた。出所したら気持ちを打ち明け、生涯を共にするつもりだったのに。

だが、事がここまで来ては、愛の神聖さで自分を欺いても、もはや愛の純潔を救えるだろうか?

もし私がまだ天真爛漫に鐘紫荷の言い訳をして、彼女は知らなかったはずだと言ったところで、何の意味があるのだろう?

彼女が知らないはずがない。昨日の鐘紫荷の様...