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83話

「靴を包んでいるビニール袋はとても簡単なもので、軽く引っ張っただけで破れた。

中には女性用のスニーカーが入っていた。デザインは普通で、ブランド物でもない。隅々まで見たが、どこのメーカーのものなのか全く分からなかった。

ほっと息をついた。良かった、ただの靴だ。

心の中で笑った。気にしすぎていたんだ。鐘紫荷は結局、僕を騙してはいなかった。

ビニール袋を手に取り、靴を中に入れて、包んで内部監房に持っていこうとした。

突然、何か違和感を覚えた。もう一度靴を取り出し、上から下までじっくり眺めてみる。

靴の中には薄い綿が敷かれていた。でも今はまだ夏だ。どうしてこんな綿の入った靴を履くんだろう?...