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646話

車のトランクでその粉を見た瞬間、本能的に警戒心が走った。

あの粉は土料(ドラッグの俗称)によく似ていた。以前の実習で、こういった知識は学んだことがある。

箱を置き、指先で少し粉をつまみ、手のひらで擦り、鼻に近づけて匂いを嗅いだ。

くそ、やはり土料だ。

くそったれ、刑務所内での薬物密輸について前から気にしていたが、なぜこれが車の中に?

まさか黎隊長もあの件に関わっているのか?

いや違う、黎隊長は外出する時は自分の車を持っているし、彼女の生活は金に困ることなど一度もなく、ただ安定した生活を求めているだけだ。彼女は絶対に職を失うようなリスクを冒さない。

それにこの車は、ほ...