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59話

鐘紫荷はぼんやりとそこに立ったまま、私に微笑みかけていた。両手で服の裾を摘まみ、絶えず行ったり来たりと揉みしだいている。

彼女の様子は、まるで悪いことをした子供のようだった。

私は顔の笑みを引き締め、真剣な表情で彼女を見つめた。「小荷、君は何も悪くないよ。もし誰かが悪いとしたら、それは僕の方だ」

鐘紫荷が顔を上げると、頬に再び赤みが差した。

「林隊長、もう言わないでください。私、他の仕事をしに戻ります。失礼します」

そう口の中で呟きながら、鐘紫荷は身を翻して去ろうとした。だが、この瞬間、どうして彼女を行かせることができようか。

私は彼女の手を捕まえ、一気に引き止めた。

「小荷、ま...