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572話

階段を急いで上がると、私は胸に三割ほどの鬱憤を抱え、全身に力が漲るのを感じていた。

二階に数歩で上がり、階段の角を曲がったところで、向こうから黒い影が慌ただしく駆けてきた。

廊下は薄暗く、私が反応する間もなく、その影は直接私の胸に飛び込んできた。

私は驚きながらも反射的に抱きとめると、すぐ後ろから時占峰の声が聞こえてきた。

「姣依、逃げるなよ!戻ってこい、そういう意味じゃないんだ、誤解しないでくれ」

その声を聞いて、私の腕の中にいるのは王姣依だと分かった。彼女は時占峰から逃げていたのだ。

くそっ、私がいない間に、時占峰はこの王姣依に何かしようとしたのか?

慌てて私の胸に飛び込んで...