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55話

「上層部からの視察が来るなんて、部屋に引きこもって縮こまっているわけにはいかないな」

紫荷と何日も苦労して準備したんだ。ここは頑張って成果を見せるべき時だ。

二歩ほど歩いて事務室の外に出ると、来客の方へ視線を向けた。

確かに、立派な視察団という雰囲気だ。

わいわいと大勢の女性たち、話しながらこちらへ歩いてくる。

先頭の中央にいる人物がまず私の注意を引いた。

せいぜい三十五、六歳くらいで、身長は蘇科長とほぼ同じくらい。端正な顔立ちで、歩き方は安定感があり力強く、非常に凛とした印象だ。

彼女が数歩前に進み、笑顔で振り返って何か言葉をかけ、同時に手を軽く振った。

まる...