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521話

車で工場のオフィスビルに着き、階段を上がっていく。

王嬌依のオフィスの前に来て、ドアをノックし、中から返事があってから扉を開けた。

入ってまず目に入ったのは、王嬌依の後ろ姿だった。

彼女は机に半ば身を屈め、水彩ペンを握りしめて何かを描き続けている。

机の横のゴミ箱には、丸めた紙くずが山積みになっていた。きっと彼女は納期に追われながらも、自分が満足するデザインを生み出せずにいるのだろう。

今回彼女から買い取った在庫品も、彼女が心血を注いでデザインしたものだが、市場に認められなかったようで、彼女にとって大きな打撃になったに違いない。

おしゃれな服装の彼女の後ろ姿を眺めながら、軽く咳払い...