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39話

虹膜データの収集なんて、そんなに難しいことじゃないはずだ。

だが張姉さんはもたもたと私にあれこれ指示を出し、十分ほども繰り返し引っ張った末に、ようやく私への執着を手放した。

彼女の顔が次第に赤くなり、やや早くなった息遣いが、ふくよかで艶やかな唇から熱い吐息となって漏れ出ているのを見て、私は逃げるように当直室を離れ、外の柵のある通路へと出た。

長く溜め込んでいた息を吐き出し、最後の瞬間まで張姉さんが理性を失わなかったことに胸をなでおろした。虹彩認証の装置の前に立ち、少し不安だったが、最後の鉄格子がギィと音を立てて開いた時、ようやく安堵した。

張姉さんには拍手を送らなければならない。あのよ...