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286話

紫荷のことを考えると、彼女が無分別な選択をしてしまう可能性に心が締め付けられた。

ずっと列の中に紫荷の姿が見えず、俺は鉄門の後ろに隠れていた。こんな風に隠れていることに、もはやどんな意味があるというのか?

俺は脇門から姿を現し、女囚たちの列へと直接歩み寄った。

名前を呼ばれた女囚たちが次々と列から出ていくが、依然として紫荷の姿は見当たらず、焦りが増していく。

そのとき、列の端を行ったり来たりしていた柳冰が、振り返った拍子に俺を見つけた。

彼女は手を一度振り、続いて穏やかな微笑みを浮かべた。その瞳には何とも言えない熱気が宿っていたが、不自然さは感じられなかった。

柳冰は俺...