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917話

「だめ、こんなの駄目よ、私たちはこんなことしちゃいけないわ、宏兄さん、離して!」

李冰霜は身をよじらせた。だが、彼女が私と闘っているのか、それとも自分自身と闘っているのか、彼女自身にもわからないようだった。

私は彼女の体を手前に引き寄せ、玄関の壁に押し付けると、一目惚れしたこの女性を見下ろして熱い眼差しを向けた。

そう、今ではっきりと確信していた。昨日、本当に彼女に一目惚れしたのだと。でなければ、なぜ命懸けで彼女を救おうとしただろう。昨日、彼女を見た瞬間に絶世の美女だと思い、何も考えずに飛び出していったのだ。

李冰霜は私を見ようとしなかった。自分の目が本心を裏切ることを恐れていた。ただ必死にも...