Read with BonusRead with Bonus

901話

彼女が知っていたのは、この世の大半の男というものが思い上がりやすい生き物だということ。少しでも愛想よく接すれば、彼らの心の中は自分に対する様々な幻想で満ち溢れ、そうなれば面倒なことこの上ない。

偉人も言ったではないか、星火燎原と。

小さな火種一つでも、とてつもない力を発揮することがある。それをどう扱うかだけの問題だ。

そういった男たちの心に火種が生まれないようにすることが最良の策。だから彼女は浮ついた男たちに冷たい態度を貫いていた。燎原の火種を未然に防ぐためだ。

豊景ビルに入って初めて、私は白温雅がどれほど凄い人物なのかを知った。

28階建ての豊景ビル全体が、白温雅の名義である上場企...