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853話

「私は見ないふりをするしかない、あなたと彼女が通りの向かいで抱き合うのを。あなたの幸せは感じ取れるわ、こんな出会い方が誰にとっても良いの……」

温小玉が『街角の祝福』を歌い続けると、部屋中に天上の調べのような美しい歌声が広がった。

彼女がこれほど素晴らしい歌声の持ち主だとは、私は驚きを隠せなかった。

一曲が終わると、貝蘭児も我慢できない様子で「次は私の番、次は私!」と興奮した様子でマイクを手に取った。

音楽が流れ始めると、貝蘭児はリズムに合わせて、ゆっくりと体を揺らし始めた。

「思い出の中で浮かぶぼんやりとした幼い頃、雲が青い空を漂って……」

貝蘭児は少し幼さの残る声で、優しく歌い始め...